内容紹介
そもそも研究者の推論はどこから生まれるのか。いかなる研究者であっても、本人が経験したことのないものを起点に発想することは難しい。いかに学び、多くの専門知識を得たとしても、素朴な疑問は彼の生きてきた時間のなかでの体験を基礎として生まれるものだろう。言い換えれば、知らないことは発想の原点にはなりえない。そのことを著者原田氏は「長い自己紹介」とする章のなかで、語っている。研究者を育てた時間、生活、人との出会い、関係。もちろん、両親の生き方が、研究者の思考を形作ってきたのである。
そうした前提で、地質学者原田氏はこう語る。人間はつながりのなかで生きていると。そしてそのつながりなくして、生きることはできないとも。
ひとつには地球とのつながり。生物とのつながり。未来とのつながり。地球の歴史のなかで生まれたすべてのモノは、他者とのつながりのなかでしか生きられない。そして人間の存在は、つながりのなかで意義をもっている。現在から未来へと自分の生きた意義を残し、人類の生きた意義を残すこともまた、人間が生きるために必要なつながりの一つであること。
つながりを切り口にして、人間はいまをいかに生きるのかということを、文化地質学的視点で、おもしろいエピソードを交えて語った1冊。
単行本
一般
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四六版
112ページ
本体価格 1800円
ISBN 978-4-908869-22-8
C0095
著者
原田憲一(はらだけんいち)
一九四六年、山梨県甲府市に生まれる。
一九七〇年に京都大学理学部地質学鉱物学教室を卒業し、米国ウッズホール海洋学研究所へ留学。
一九七七年、京都大学大学院博士課程修了(理学博士号取得)後、一九七八年にアレキサンダー・フォン・フンボルト財団奨学研究員としてキール大学へ赴任。一九七九年、米国ワシントン州立大学地質学研究室客員講師を経て、一九八〇年に山形大学理学部地球科学科助教授となる。
二〇〇二年、京都造形芸術大学(現京都芸術大学)を経て、二〇一五年至誠館大学学長に就任、二〇一八年に退任。
比較文明学会会長、他を歴任し、現在に至る。
本書の目次より
長い自己紹介/生き物を育てる土/災害がもたらす恵み/アマゾンを育てるサハラ砂漠/海のプランクトンを育てる土/山をつくる力 /陸を削る力/人間は宇宙に移住できるか/濃集作用による大気の浄化/濃集作用による海水の浄化/資源とは何か/資源利用と環境破壊/地球史カレンダー/自然界は弱肉強食か/生態系の仕組みと陰陽五行説/自然界は共存共栄/食物連鎖と養分の循環/土の実態/オージービーフを救ったコガネムシ/農業の反自然性/人工物の危険性/絶滅に直面するのは誰か/食物連鎖から離脱した人間/人間は生命史上初の芸術家/美しくなってきた地球/人間の誕生/地層に残る人間の痕跡/新知体とはいかなる生き物か/暴かれる人類絶滅のシナリオ/芸術に託す新知体へのメッセージ
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